イングリッド

 

登場作品:カプコンファイティングジャム

 

 

2000年代に入ってから2D対戦格闘ゲームは不遇の時代を迎えました。2D対戦格闘ゲームの雄SNKは攻めの経営が災いして倒産し、残されたもう一つの雄、カプコンもカプコンVSSNKシリーズが商業的には健闘するものの、社内ではドット絵で製作していることが時代遅れという扱いを受けたために開発チームは続編の3を制作したい思いはあったものの断念をしました。以降、カプコンで2D対戦格闘ゲームの開発自体が無くなってしまい、対戦格闘ゲームの制作はポリゴンを使用した3Dでの制作にシフトしようとします。そのタイトルがカプコンファイティングオールスターズでした。この作品は元SNKスタッフが会社の倒産のために開発チームごとカプコンに移籍し彼らで制作が進められていきました。

 

そのタイトル通り、カプコンの人気キャラクターたちが闘うオールスター格闘ゲームでしたが、オリジナルの主人公が三人いて彼らのデザインは元SNKスタッフ達が開発しているだけあって、SNKのThe king of fightersに出場していてもおかしくないスタイリッシュな雰囲気を漂わせていました。彼らの名前はD.D.、ルーク、イングリッドといいました。しかし、この作品は東京ゲームショーや社内ロケテの評判が悪かったために、作り直そうとしたものの結局開発中止となってしまいました。対戦格闘ゲームというジャンルの需要が下がっていた時期であることやドット絵での制作が出来る環境でなかったことと不運が重なった作品で20世紀に作られていたならまた違った結果になっていたかもしれません(その時、開発スタッフはSNKにいたからどちらにしろ実現不可能な話ですが)。

 

当時、アーケードゲーム専門誌のアルカディアでファイティングオールスターズの記事が載っていて新キャラクターの三人はカッコ良いなぁと思っていただけに開発中止を知った時はとても残念でした。と同時に対戦格闘ゲームはいよいよ斜陽の時代に入ってしまったんだなと二つの意味でショックでした。

 

しかし、その二年後に三人の主人公のうちイングリッドが思いもしなかった形でゲームのキャラクターとして世に出ることになりました。2004年に発売されたカプコンファイティングジャムでプレイヤーキャラクターとして登場したのです。ついに登場した彼女はお蔵入りとなったカプコンファイティングオールスターズの時と同じように中世ヨーロッパのような格式のある制服らしき服装にまだあどけなさの残る少女の見た目でとても可愛らしかったですが、実際プレイしてみるとキャラ性能はスタンダードですが、一人称は「わし」であったり語尾に「じゃ」と付けたりだいぶ年齢を重ねているような話しぶりで、見た目とのギャップがありすぎるそのキャラクターにだいぶやられました。年齢は80歳くらいらしく、一癖も二癖もあるその設定は流石、元SNK開発チームだと感じます。

 

イングリッドはその後もストリートファイターゼロ3ダブルアッパーにも登場するなど、元の作品がお蔵入りになった中でもちょこちょこいろんな作品に顔を出しています。しかし、カプコンの対戦格闘ゲームといえばやはりストリートファイターシリーズ。ストリートファイター4で2・5Dの新境地を開拓して再び格ゲーファンたちから注目を集めるようになったストリートファイターシリーズのナンバリングタイトルの新作にもいつか出て欲しいですね。

 

 

カプコンファイティングジャムのイングリッド

 

▬イラスト:ラッカボルバーさん(Pixiv link

※作者の許可を得てイラストを掲載しておりますので、イラストの無断転載は控えていただけますようお願いします。