エレナ

 

登場作品:ストリートファイター

 

 

ストリートファイター3に新キャラクターで登場したエレナはケニア出身のカポエイラ使い。ストリートファイターシリーズ初のアフリカからのキャラクターで褐色の肌をしていて、衣装は下着に近いシンプルなもので民族的でカラフルな色彩のアクセサリーを首や手首などにはめています。

 

春麗の出ない今作ではそのレジェンドの代わりに作品に華を添える重要な役割を担っていたエレナですが、エレナのステージでは背景に樹木が生命力に満ち溢れるほど生い茂るジャングルが見えるので、ストーリーはサバンナに暮らす部族に訪れた危機を救うためにエレナが世界を旅立つという春麗のようなシリアスなものを想像していたのですけど、ラスボスであるギルを倒した後のエンディングではエレナは日本で女子高生をしていて留学生として日本で生活している様子。同級生らしき女の子と自転車で坂道を下りながら仲良く会話を楽しみ国は違っても友達の心には何の違いもないと心から感じているのでした。血が飛び骨が軋む武骨なストリートファイタ―の世界においてなんともなごやかで健全な話だったのでした。

 

開発スタッフが意図していたかどうか分かりませんが、エレナは春麗というよりもさくらに近いポジションだったのかもしれません。さくらが憧れの人と闘うために追いかけて世界中を旅する一途な少女ならエレナは大自然を愛し違う国の人間とも仲良くなりたいピュアな心の少女。武骨な格闘技の世界の中でそういうキャラクターも必要だとさくらが登場して以降思うのです。

 

その後、エレナはウルトラストリートファイター4にも登場し、家庭用の移植版ではアニメのムービーがオープニングとエンディングに付いています。その映画のような美麗な映像から展開されるムービーでは、村の木々に異変を感じるエレナに対して、父が「死を生み出す者たちが世界中に悲しみの種を撒いている」と教えます。死を生み出す者? 何のことかよく分からないエレナに父は一枚の紙を渡します。その紙は、世界格闘技大会を開催する告知であり、この大会を主催する企業が死を生み出す者と自身の推測を伝えます。そして、父は命ずるのでした。この大会に参加して世界で何が起きているのか確かめてくるのだと。

 

ほのぼのとしたストリートファイター3と違い、シリアスなストーリー。主催する企業、S.IN.はシャドルーの兵器開発部門を担当する軍事企業。それはまだ少女であるエレナにはあまりに危険すぎるミッションです。でも、エレナはどこにおいてもエレナでした。

 

エンディングでは、今回の旅で世界中に新しい友達が出来たのと父や兄に告白します。そして、はじめは闘わなきゃならなかったけど、闘うことで分かったことがあるの。仲良くなりたいって気持ちがあればどんな人とも友達になれると満面の笑みを浮かべて言うのでした。道中の過程で写した写真では世界各国の格闘家と打ち解けているショットの数々が見られます。その中にはあの豪鬼の背中に抱き着きじゃれ合う写真も。リアクションに困る豪鬼の表情がなんとも微笑ましいです。殺意の波動に自らの意思でその身を委ね、闘いを死合いと呼ぶあの拳を極めし者とも分かり合ったエレナ。世界中の誰とでも仲良くなれる。父と兄の前でそう言ったエレナですがこの一枚の写真を見たらそういう気持ちを格闘ゲーマーたちも持ててしまう。そう感じさせるほどに不思議な説得力を持つ豪鬼とエレナの写真でした。もし人間関係が上手くいかなくて悩んだときはエレナと豪鬼の写真を思い返したい。僕の心に今も鮮烈に残っている写真です。

 

 

ストリートファイターのエレナ

 

                                           ▬イラスト:しげのふさん(Pixiv link)          ※作者の許可を得てイラストを掲載しておりますので、イラストの無断転載は控えていただけますようお願いします。