出雲良子
登場作品:ワールドヒーローズ
ストリートファイター2が大ヒットして対戦格闘ゲームが沸きに沸いていた93年、それまでいなかった柔道家のキャラクターが三人も出てきました。ワールドヒーローズ2の出雲良子、ファイターズヒストリーの嘉納亮子、そして餓狼伝説2の山田十兵衛です(餓狼伝説2は92年12月稼働でしたけど)。出雲良子と加納亮子は女子校生なのに対し山田十兵衛はお爺ちゃん。この頃のSNKはものすごく硬派でした。柔道家なので当然必殺技に投げ技があるけれど、出雲良子と加納亮子がコマンド技なのに対して山田十兵衛は投げ技なのに溜め系コマンド。冒険しすぎですSNK。それでも僕は山田十兵衛を持ちキャラにしてました。そういうわけで、山田十兵衛についてといきたいところですけど、コラムの趣旨に沿って、今回は出雲良子について書きたいと思います。
ワールドヒーローズはあらゆる時間軸の世界中の英雄がブラウン博士が開発したタイムマシンで集結し世界一を決めるために闘うという設定で、過去の様々な時代、国から英雄たちが登場するのですけど、出雲良子は現代の人間です。モデルが実在の人だからなのでしょうけど、そこは触れずにむしろ柔道漫画の影響がけっこうあったんじゃないかと思っています。同じ時期に三人も柔道家のキャラクターが出たのもその漫画がアニメ化されていたからというのが大きかったと思いますし。
出雲良子は女性柔道家なので必殺技の投げ技が強いですけどスピードも速く、スピードのある投げキャラの元祖といえました。当時こういう性能のキャラは新鮮だったので僕はワールドヒーローズ2でも柔道家の出雲良子をよく使用していました(というかファイターズヒストリーでも持ちキャラは加納亮子でした)。二段背負い投げという相手を背負い投げで上空に投げてから自分もジャンプして飛ばされている相手を掴みもう一度背負い投げするというコマンド投げが気持ち良く、戊殺掌というその場で左右の掌を合わせて気の塊を起こす必殺技も使い勝手は良くなかったけどかっこ良かったです(戊殺掌の元ネタは修羅の門という漫画からだと思います)。
でも、この頃の格闘ゲームはコンピューター戦の難易度が以上に高くなっていてワールドヒーローズ2も前作に比べてはるかに難易度が上がっていました。特にラスボスのディオの強さは異常で僕の腕ではとても勝てるレベルでなく出雲良子のエンディングを一度も見ることが出来ませんでした。当時はゲーメストというアーケードゲーム専門誌がありましたけど攻略中心でキャラクターのプロフィールは詳しくは載ってなかったので、柔道家の出雲良子がどうして世界の英雄たちと闘っているのか僕はずっと知らずにいたのですよね。
それで今回出雲良子のコラムを書きたいと思って、彼女のストーリーを調べてみると、柔道家である良子は真の格闘家になるために修業に出され、世界の格闘家たちと闘う旅を続けていました。でも、一向に闘いの意味を見出せずにいたんです。そんなある日、ハンゾウとストリートファイトをして負けてしまい、ハンゾウからワールドヒーローズという大会があることを知らされ、大会への出場を誘われます。良子は二つ返事で出場を申し出て、闘いの意味を見出そうとするのでした。これがワールドヒーローズ2の良子のストーリーでシリーズ最終作のワールドヒーローズパーフェクトでは、真の格闘家を目指すため、またハンゾウに追いつき追い越すためと修業に励んでいて、大会に向けて「やったね。またハンゾウさんに会える」と言う台詞を残しています。
良子のストーリーを知った時、すぐにストリートファイターのさくらが思い浮かびましたけど、もちろんワールドヒーローズ2の方が発売は早く、憧れの人を追い求めて闘いを続けるという設定は女子高生の格闘家の王道の中の王道なのだとこの瞬間思いました。スピード系投げキャラの元祖であるだけでなく、憧れの人を追いかけて闘いの日々を送る女子高生格闘家の元祖でもあった出雲良子もまた対戦格闘ゲームにおけるワールド級のヒロインで、彼女が闘う理由を知ってしまって、またワールドヒーローズ2をやってみたいと思いました。
▬イラスト:もんじさん
※作者の許可を得てイラストを掲載しておりますので、イラストの無断転載は控えていただけますようお願いします。
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