ユリ・サカザキ

 

登場作品:龍虎の拳

 

 

「やめて!!お兄ちゃん。その人は…その人は、私たちの……」

 

この台詞を見ただけで、誰の言葉なのか分かった人は、だいぶ昔からのSNKの格ゲーファンの方が多いのではないでしょうか。

 

この台詞を言ったのはユリ・サカザキで龍虎の拳のエンディングのシーンからです。天狗の面を被った自分と同じ技を使う謎の格闘家と闘っていた兄のリョウ・サカザキがとどめの一撃を放とうとした寸前にユリが悲痛な表情でそう言って止めに入ります。

 

「ばびっとやっつけちゃうぞ!」と試合前に相手に言ったり能天気に見えるほどに明るく無邪気な姿をみせるThe king of fightersでのユリからは想像も付かないほどシリアスで女性らしい言葉遣いですが、龍虎の拳1の時はまだユリは普通の少女で格闘技は習ってなくユリが拉致されたことを知ったリョウとロバートが救出しようとする物語でした。拉致されたユリを探しに出たリョウとロバートがサウスタウンで闘いを繰り広げながら敵の組織のボス、MR.BIGを倒しさらに不敗の格闘家MR.KARATEと闘った末に倒し、冒頭の台詞に繋がるのですが、その後に出てきた文字は、

 

To be continued……

 

そこで次回に引っ張るのかよとまさかの謎にしたまま次回作へと予告するエンドでした。謎といってもお父さんなんでしょとみんな察してたと思いますが。ともあれゲームをクリアーしたのに気持ちは早くも次回作に向けられ、その後もSNKが対戦格闘ゲームの新作を出しそれらの作品に夢中になる中でも心の片隅では龍虎の拳の続編を楽しみにしている自分がいました。

 

そして、まさかの次回作へ続くエンドから一年とちょっとが過ぎたころ、友人から電話がかかってきました。

 

「〇〇(私の苗字)知ってたか、龍虎の拳2の新キャラでユリが出るんだって!!」

 

「何言ってるんだよ、嘘もほどほどにしとけよ」

 

私は友人の話を嘘だと決めつけ全く相手にしませんでした。ユリが出るわけないじゃん。格闘技の素人だったんだからと。

 

そして、一週間後。アーケードゲーム情報誌のゲーメストの最新号を目にした私は待ち望んでいた龍虎の拳2の第一報の情報が掲載されていることが表紙から分かり、うきうきとページをめくります。

 

新キャラクターユリ・サカザキ。

 

ホントだったのかよ。相手にもしなかった友達からの情報が本当だったと分かり、百メガ級のショックを当時は受けたものでした。一年前までは格闘技の素人だったのに一年でリョウたちと大会で闘えるほど強くなれるわけないじゃん。シリアスなストーリーと硬派な世界観が台無しだよとその時は思ったのの、アーケードで稼働されるとまったくそのことは気にせずに楽しくプレイしました。口には出しませんでしたが、可愛いからいいかと心の中で思いながら。

 

ユリが龍虎の拳2に新キャラクターとして登場することになり当時は多くのゲーマーが衝撃を受けましたが、衝撃を受けたのはゲーマーだけではありませんでした。

 

同時期にThe king of fightersを開発していたスタッフが龍虎の拳2にユリが新キャラクターとして出ることを知り、KOFにも出したい思いを持ったのです。その時にはプレイヤーはすでに24名全て決まっていました。ユリを出したいからといって25人にするわけにもいかず誰かを引っ込めなければなりません。

 

そこで目に付けられたのがイギリスチームでキングとチームを組んでいたビリー・カーンとビッグベアでした。この二人が参加キャラクターから外されることになり、イギリスチームは女性格闘家チームというくくりが付けられ、棚ぼた式に不知火舞も参加が急遽決まりました。イギリス人のビリー・カーンがいたからイギリスチームだったのにイギリス関係なくなってしまったのですけど。とはいえ、ブラジルチームもリョウたち極限流一家とは全然関係なかったですしイタリアチームの餓狼伝説チームも同様に関係がないですから、その辺の事情を知らなかったゲーマーたちはそういった細かいことは気にせずにユリとキングと舞がチームを組んだことにただただ喜びました。

 

 

それ以降、KOFで女性格闘家チームはメンバーの変動はあれど欠かせないチームとして毎回参戦するようになりましたけど、そのきっかけは龍虎の拳2でユリが新キャラクターとして登場したことにあったのはあまり知られていない話かと思います。

 

 

龍虎の拳のユリ・サカザキ

手前がユリ。奥で構えるのが兄のリョウ。兄妹とも極限流空手の使い手である。

 

                                              ▬イラスト:英さん(Pixiv link)       

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