ジョー東

 

登場作品:餓狼伝説

 

 

ストリートファイター2が91年に発売され大人気の中、その年の末にゲームセンターで稼働された餓狼伝説。プレイできるキャラクターは三人でしたが、僕はジョー東を使っていました。テリー・ボガードもアンディ・ボガードもアメリカ人で明らかに華があるのに地味なジョーになぜか無性に惹かれるものがありました。

 

当時の日本ではボクシング、プロレス、空手、柔道、相撲、キックボクシングが馴染みのある格闘技でしたが、ボクシングは人気が高くプロ競技として、柔道はアマチュア競技として、相撲は国技として独立して成立していて格闘技というよりも競技という認識があって、逆に門戸が広く他の格闘技との関りもある空手やプロレス、キックボクシングが格闘技という色合いを強く持っていたようにも思えます。

 

その中でキックボクシングは日本においてプロの興行として行われていたものの、まだマイナーな競技で真空飛び膝蹴りで知られていたある選手によってプロとしての興行もあるんだという程度の知名度にすぎないものでした。ですから、そのマイナーだけど日本でもプロ競技として行われているキックボクシングの選手で本場のタイのムエタイでも試合をしている日本人がアメリカの格闘技大会に参加するというのはとてもリアリティを感じ、アメリカのB級アクション映画でそういう選手が格闘技大会に出ていたとしてもとてもしっくりくるものがありました。主人公ではなくアメリカ人の主人公を支える脇役に日本人のムエタイの選手を出すというのが絶妙でこれ以上ないくらいに適した配役だったと思えます。ですからジョーは初代餓狼伝説のころから名脇役として光っていたんですよね。

 

その後、餓狼伝説はアニメになり、K-1の佐竹雅昭選手がジョーの声を担当し、段々と佐竹選手の影響が出ていくように感じられ、初代のジョーから離れていくのですが、初代餓狼伝説に思い入れのある僕としてはジョー東といえば初代のイメージが一番強いです。その頃はまだアメリカのB級アクション映画に出てくる日本人のムエタイ選手というステレオタイプから抜け出ない雰囲気でしたが、だからこそそれがいいと思える魅力を放っていました。

 

ギースが支配する街で行われていた格闘技大会で試合に勝つたびに膝を付いて両腕でガッツポーズをしてウォッシャー!!と叫んでいたジョー。まだ世界的には有名ではなかった日本人の青年の歓喜の叫びがその姿から伝わってくるものがあって、僕も餓狼伝説2の大会で予選を勝ち抜いて本戦に出られることが決まった瞬間はウォッシャーと声に出していました。山田十兵衛での出場でしたけど。