オロチ編の二作目にあたるThe king of fighters96でボスキャラクターとしてついにオロチ四天王の一人であるゲーニッツが登場しましたが、この時すでに残りの四天王のアイデアもあったそうで、ディレクターとしてKOFの開発を指揮していた鍬差氏はKOF96の開発が終わるとSNKを退社したのですが、その際に残りの四天王の案を開発スタッフに伝えておいたそうです。残りのオロチ四天王は主人公チームと同じ属性の能力を持っていて、前髪が長くて目を隠している女の子と子供、大地の力を使用するキャラクターは特にイメージはなく、バンドをしている設定は氏の中ではなかったそうです。

 

鍬差氏から具体的なビジュアルの指示がなかった七枷社に関しては、彩京が開発した対戦格闘ゲームの堕落天使のキャラクターである壬生灰児のビジュアルが七枷社と似ていることがちょっと話題となり、壬生灰児をデザインしたデザイナーが当時、SNKを退社する前にKOF97の開発に携わっていて七枷社の原型のようなラフ絵を残して会社を退社したそうで、その後に自分のラフ絵がキャラクターとして採用されていることに気付いたらしく、そのデザイナーが壬生灰児と七枷社のデザインに関わったことが二人のキャラクターが似ている理由であることをなにかのメディアで発信していた記憶があります。これに関してはだいぶ昔の話なので事実と違うところもあるかもしれませんが。

 

こうした経緯から生み出されたシェルミー、クリス、七枷社のオロチチームは、その原案を持っていた鍬差氏の構想の中にはバンドをしている設定はなかったのですから、主人公チームと同じ能力を持っているという裏設定は、残った開発スタッフのアイデアによるものだったのではないかと思われます。

 

KOFのオリジナルキャラクターでKOF95から登場している八神庵は草薙京と同じ技を幾つも使いますし、KOF96から登場しているレオナ・ハイデルンは、義父であり教官でもあるハイデルンと似た性能のキャラクターですから、そうなると新キャラクターのキャラ性能に新鮮味が欲しいところで、主人公チームと同じ能力を持って闘うという設定は裏のキャラクターの設定にしてボスキャラクターとして登場時に使用して、通常のキャラクターでは、全く別の能力で闘うようにしたアイデアはなんとも絶妙な案だったように思えます。

 

SNKを退社したスタッフたちによってアイデアの元が出され、残った開発スタッフの手でそのアイデアを元にキャラクターに一層の深みが与えられたオロチチームは、KOF97がゲームセンターで稼働した当初はバンドマンなんて格闘と関係ないじゃないというツッコミもありましたけど、プレイしてみると、格闘家とは真逆のそのゆるさがなんとも魅力的に映りました。そしてボス戦でオロチ四天王として再登場した彼らの姿にワクワクせずにはいられなくなり、しかも主人公チームと同じ能力を使っている!という驚きまで与えられ、オロチチームの大将として登場した七枷社にいたっては両腕を婉曲させながら八の字を描く挙動のファイティングポーズを構えていて、仏様みたいな動きをしているその様は神の使徒に申し分のないインパクトを残してくれて、地球意思たる神との最終決戦を前にした闘いに相応しい盛り上がりを見せてくれたのでした。

 

その後に出てきたラスボスのオロチも魂を抜き取る技を使用したり、画面全方位に緑の光を下ろしてきたりと神たるに相応しい闘い方を繰り広げてくれましたけど、オロチ編完結のエンディングをより多くの人に見てもらいたい開発スタッフの意図から弱く設定されてしまったために神と闘っている盛り上がりに少し欠けてしまった面もあってか、KOF97の人気を支えたのは中ボスで真の姿を見せてくれたオロチチームに他ならないのかなぁと思うのでした。

 

KOFのチームの中で一番人気があるかもしれないオロチチーム。表と裏の顔を持つシェルミー、クリス、七枷社彼らが生み出されたその背景には、一人でなくいろんなスタッフのアイデアが組み込まれていたのだと思うと、神がかったインパクトを残したKOF97の彼らの活躍ぶりにもなるほどっと合点がいく思いになるのでした。