The king of fightersはタイトルを重ねていくにつれて選択出来るキャラクターの数が増えていき、KOF14ではついに50人のキャラクターを使用出来るようになりました。そんなシリーズの中で最もキャラクターの面子が充実している作品といえばやはり最新作のKOF15でしょう。

 

KOFは3ON3のチームバトルだけでなく、3人によるチームが織りなすストーリーも魅力の一つです。ただストーリーに力を入れる思いが強すぎたためかストーリーの展開で主要な人物が亡くなることも珍しくありませんでした。物語のクライマックスで主要なキャラクターが亡くなる展開は大きな衝撃を与えましたけど、そうして次の作品で新たなキャラクターが登場していく一方で、KOF13では主人公のアッシュまでその存在が消滅してしまい、流石にスタッフもストーリーの都合で人気のキャラクターを出せない現状をなんとかした方が良いと思ったのか、亡くなった格闘家たちが復活する展開がKOF14では組み込まれました。ですから、KOF15で人気のキャラクターたちが集結したのは開発スタッフの尽力があった賜物で、そのおかげでアッシュ・クリムゾン、オロチチームのシェルミー、クリス、七枷社が登場することになりました。

 

こうしてみると、亡くなったキャラクターの復活の人数はそこまででなくて、亡くなった格闘家が復活した展開の恩恵はそこまでないようにも思えますけど、ただこの四人の人気は相当なものですから、この四人が出るのと出ないのではやはり売り上げにもけっこう影響があるんでしょうね。  

 

しかも、KOF15では亡くなったわけじゃないけれど諸事情から存在が無かったことにされていたK9999までも外見と名前を変えた奇策で二十年ぶりに参戦となりました。アッシュ、シェルミー、クリス、七枷社だけじゃなくてK9999までもが参加となったKOF15の彼らが一堂に集まるキャラクター選択画面は見るだけでワクワクした思いが膨らんだものです。 

 

一方で、ゲームのファンの思いは罪深いほどにわがままな面もあって、まだ物足りないという思いも出てくるのでした。開発スタッフの方々にはホントに申し訳ないのですけど。これまで出すことが出来なかった人気キャラクターがこれでもかと集まってそれでも何が足りないというのか……。それは、遙けし彼の地より出ヅルモノ達でした。彼らがチームを組んで登場してくれたら……そんな奥底にあった思いが……この豪華なキャラクターのラインナップを見ることで湧いて出てくるのでした。  

 

遙けし彼の地より出ヅルモノ達が初登場したのはKOF2003でラスボスとして登場してきました。遙けし彼の地より出ヅルモノ達の一人であるムカイは勝ち上がってきたチームを前にしてオロチの名前を出します。ネスツ編ではSFをテーマにしたもののストーリーの人気があまり評判よくなく、再び神話が物語の世界観の軸となったのは嬉しいものの、人気が高かったオロチ編のストーリーに再び頼るのには複雑な思いもありました。ゲーム内では語れませんでしたけど、その後のムック本などの情報で、オロチが東洋の地球意思であるのにたいして、遙けし彼の地より出ヅルモノ達を統べる存在は西洋の地球意思であることが分かりました。かつての敵は東洋の地球意思で、新たな敵は西洋の地球意思……。少年ジャンプを思い起こすあまりにベタな展開でしたけど、それもKOFの魅力の一つということで、そもそも少年ジャンプネタはKOF94の時から多数ありましたし。

 

そんなこんなで神楽ちずるの能力を主人公であるアッシュが奪い取ったりと衝撃の展開もあって、なんだかんだで続きが楽しみに感じさせたKOF2003でした。こうしてKOFに登場した遙けし彼の地より出ヅルモノ達はKOF11でもボスとして出てきて、アッシュはアッシュで今度は八神庵の能力までも奪い、物語はがぜん続きが気になって仕方なくなっていきます。  

 

KOFのシリーズは三部作で作られていて、三部作の最後の作品がシリーズの中で最も盛り上がりをみせてきました。ミステリー漫画の謎解き編の話が最もアンケートで人気が集まるのと同じで、やっぱり最後どういう結末になるのか気になりますし、一作目、二作目とストーリーが広がっていって、登場キャラクターもライバル、ヒロインと増えていき、お膳立ては十分となった状態で、完結編ではついに敵の勢力がチームを組んでKOFに参戦してきたのですから、盛り上がらないわけがありません。  

 

ついに遙けし彼の地より出ヅルモノ達もチームを組んで登場するのか。そんな期待が膨らんで最新作を待ち望んでいたのですけど、ゲームの開発基盤をアトミスウェイブからタイトーのTYPE X2に変えたことで、最新の技術で描くドット絵の制作に時間がかかりすぎ開発は進まず、待てども待てども情報すらなかなか出てこなく、情報が出てきたと思ったら最新作はストーリーは無しとのアナウンスが……完全新規のキャラクターも無く、完全に肩透かしを食らったKOF12は、三年半の期間を経てようやくアーケードで稼働すると作品の中身自体はそれ以上に大きな肩透かしとなってしまったのですけど、それから一年と三カ月後に発売されたKOF13でようやくアッシュ編が完結となりました。  

 

しかし———このタイトルに遙かなる出ずる者がチームとして登場することはなかったのでした。出てきたのはボスキャラクターのサイキだけ。結局、最新技術のドット絵でキャラクターを作るのに時間がかかりすぎて、完全新規のキャラクターを出すのはボスだけで精一杯であったのでした。  

 

それでもゲーム自体はグラフィックもキャラクターのモーションもとても素晴らしくて、僕は歴代のKOFで最もよく出来た作品なんじゃないかと思いますし、KOF98、KOF2002と並んで評価の高いKOFとなりました。  

 

ただ、この三つのタイトルの中ではKOF98、KOF2002の方が人気は高い印象があって、それは使用出来るキャラクターの数に差があったことが大きいと思うのですけど、KOF13で遙けし彼の地より出ヅルモノ達がチームを組んで登場していたら、歴代KOFの中で最も評価された作品となっていたんじゃないかとも思うのでした。  

 

最高のグラフィックとキャラクターのモーションを追い求めたがために、その煽りを受けて登場することが適わなかった遙けし彼の地より出ヅルモノ達チーム。ストーリーもとても良く出来ていたためにエンディングを見ることで彼らがチームとして出てきたらという思いはさらに募ったのですけど、ドット絵による対戦格闘ゲームの制作の限界も感じさせた今作でKOFの開発は一旦休止となり、次作が作られるのは六年後となったのでした。  

 

そして、新たに加わった開発スタッフたちを中心にKOFの新作の開発が再び始まりましたけど、そのKOF14にしても次作のKOF15でも遙けし彼の地より出ヅルモノ達がチームで出てくれないかなぁと待ち望む思いが自分の中でどこかにあるのでした。  

 

それは、アッシュ編完結作のKOF13で遙けし彼の地より出ヅルモノ達チームが出てこなかったことをずっと引きずっているからなのかと思います。  

 

KOF15でアッシュ、オロチチーム、K9999と人気キャラクターが復活しただけにその思いが今作で強く出てしまったのですけど、そんな中でなぜこれほどまでに遙けし彼の地より出ヅルモノ達チームの登場を願うのかと冷静に思いを見つめている時にふと思ったのは、KOF2003でキャラクターの公式イラストを担当したFalcon氏がキャラクターのデザインも中心となって担い、そうだとしたらFalcon氏の世界観が反映されたキャラクターたちにとても惹かれるものがあるのかなぁという憶測でした。僕はFalcon氏の絵がとても好きで氏が個人の公式サイトを運営していた時はその絵をよく見ていたほどで。よく見ると登場キャラクーたちも氏の世界観ととてもリンクしているように見えますし。  

 

そこで、資料をいろいろと探してみると、KOF2003ではFalcon氏が立候補する形でキャラクターのイラストを担当することになった経緯が分かりました。前作まで担当していたノナ氏はKOF2003のドット絵の制作が忙しすぎてキャラクターの公式イラストまで手が及ばず、それでFalcon氏が名乗りを上げたという経緯があって、だとするなら、Falcon氏が公式イラストを担当することになった時点でキャラクターのデザインもすでに出来上がっていますから、おそらくFalcon氏はキャラクターデザインにはノータッチなのかなと思います。

 

誰が主要な立場で新たなキャラクターがデザインされたかは結局分からずじまいなのですけど、オロチ編はKOF94でグラフィックディレクターを務めた児玉氏の影響が色濃く出てますし、ネスツ編はSNKの経営が傾いていた頃でそれまでの開発スタッフが抜けていく混迷期の中で作られましたけど、シリーズごとに開発スタッフの陣容も変わっていきますし、そうした中でシリーズの色もその開発スタッフの影響が反映されますから、KOFといってもシリーズごとにキャラクターの色も違いがあります。  

 

SNKがSNKプレイモアになって新たに始めたKOFの新章であったアッシュ編。この作品もまたこの時でしか出せない魅力がキャラクターたちの中に組み込まれていますし、その中で一つの目的のために結束を固め行動する遙けし彼の地より出ヅルモノ達には当時の開発スタッフのデザイナーたちの色が最も強く反映されているのかもしれません。なにせKOF13のデモに出てきた彼らは九人もいたわけですから。そういったわけで、オロチチーム、ネスツチームとはまた違う味わいを持った遙けし彼の地より出ヅルモノ達を使用することで彼らの魅力を十分に堪能したいという思いからずっとチームとして登場するのを待ち望んでいるのでした。  

 

もし、遙けし彼の地より出ヅルモノ達がチームとして出てくるのなら……やっぱり牡丹は外せないですし、いろいろと登場シーンも多いシュルーム、密かに人気の高い紫苑、KOF2003のラスボスを務めて存在感が強いムカイなど、どういったメンバーで出てくるのか、想像するだけでも楽しいですねっ。